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言霊 11
2008.10.03
Fri
11:17
咲子と飲茶ランチを終えた私は、天美の悪事に怒りが溢れ、道行く人の歩きタバコを片っ端から
念を込めて消してゆく。
「アンタの念は濁っておる」
背中から声を掛けられた。
私の肩くらいしかない老人は、皺だらけの中にある目を細めて言った。
「通りの真ん中じゃ、あそこに座ろう」
念が見破られたのかもしれない。
そう思いながら、風が吹けば飛んでいきそうな老人にまさか、と言う気持ちもあった。
しかし素直についてゆく私は何だろう。抵抗できない何かがあったのだ。
老人は小さな公園に入ると、壊れかけたベンチに座り、隣を勧める。
「あの、何かのお間違いでは?」
私はとぼけた。
我関せずの老人はブランコに目をやって言った。
「念には明と暗があって、アンタのは下(げ)のやや暗だな。
訓練次第では、いい念力使いになる。いいかい、あのブランコを見てるがいい」
老人は庭木でも見るように眺めると、
ブランコは風も無いのに大きく揺れだし、やがて元のように動かなくなった。
私は驚きのあまり顔をまじまじと見た。
「凄い・・・」
「悪戯でタバコなんぞ消すケチは事はするもんじゃない」
恐縮して小さくなったけれど、同類の老人に思いのたけを打ち明けたくなった。
仮に老人が自宅で私の事を打ち明けても本気に取らないだろうから。
「私はこの力を使って何度も恋人を振り向かせています。その中の一人は、少し片手が利かなく
なったほどです。卑怯者の私に良い事は続きませんでした。恋人はある事件を追っていて
亡くなってしまいました。全部、私の所為だと思っています」
思い出して涙ぐみそうになりながら伝えたが、老人は鼻で笑った。
「アンタの念力でそうなったんじゃないよ」
「え、でも本当に彼女は片手が利かなくて、それを苦にして彼から身を引いたんですよ」
「念も気持ちも甘いのお・・・ワシにはアンタの力量が見えるから、
彼女にそんな大層な事が出来るわけがない。偶然が重なっただけの話じゃ・・・」
何年も良心の呵責に苛まれていたのに、偶然の一言で片付けられてしまった。
脱力感から、言いようのない爽快感に気持ちが変わってくる。
青空が清清しく見えたのは何年ぶりだろう。
「そうだったんですか・・・参ったな・・」
「で、事件とは?」
私は顔を引き締めた。調べた事を打ち明けようと思った。
「恋人の遺志を汲んで事件を探ってゆくと、タバコ税から闇タバコへ、
そして他にも何か企んでいる議員を見つけ出しました」
眠っていたかのようにしていた老人の目が光りだした。
「ほー、面白い。で誰じゃ」
「天美がもっとも黒くて、あと早川です」
老人は大きく頷き「ワシらもマークしておる」と言った。
又しても驚かされ、私は穴の空くほど老人を見つめた。
念力で起こしたのだろうか、ごみを巻き上げた風が公園の左から右に通り過ぎた。
私の気持ちが読めたようで老人は笑った。
「あはは、ワシじゃあないよ」
「てっきりそうだと思っていました」
「自然界に手出しは出来んが、ワシらは世直しをしておってな。どうしても我慢ならん奴らを、
会合で決を採ってから懲らしめておるんじゃ。天美も早川も入っておる。そうだ!アンタ暇かい?」
私が呆気にとられながら頷くと老人は立ち上がって腰をゆっくり伸ばした。
念を込めて消してゆく。
「アンタの念は濁っておる」
背中から声を掛けられた。
私の肩くらいしかない老人は、皺だらけの中にある目を細めて言った。
「通りの真ん中じゃ、あそこに座ろう」
念が見破られたのかもしれない。
そう思いながら、風が吹けば飛んでいきそうな老人にまさか、と言う気持ちもあった。
しかし素直についてゆく私は何だろう。抵抗できない何かがあったのだ。
老人は小さな公園に入ると、壊れかけたベンチに座り、隣を勧める。
「あの、何かのお間違いでは?」
私はとぼけた。
我関せずの老人はブランコに目をやって言った。
「念には明と暗があって、アンタのは下(げ)のやや暗だな。
訓練次第では、いい念力使いになる。いいかい、あのブランコを見てるがいい」
老人は庭木でも見るように眺めると、
ブランコは風も無いのに大きく揺れだし、やがて元のように動かなくなった。
私は驚きのあまり顔をまじまじと見た。
「凄い・・・」
「悪戯でタバコなんぞ消すケチは事はするもんじゃない」
恐縮して小さくなったけれど、同類の老人に思いのたけを打ち明けたくなった。
仮に老人が自宅で私の事を打ち明けても本気に取らないだろうから。
「私はこの力を使って何度も恋人を振り向かせています。その中の一人は、少し片手が利かなく
なったほどです。卑怯者の私に良い事は続きませんでした。恋人はある事件を追っていて
亡くなってしまいました。全部、私の所為だと思っています」
思い出して涙ぐみそうになりながら伝えたが、老人は鼻で笑った。
「アンタの念力でそうなったんじゃないよ」
「え、でも本当に彼女は片手が利かなくて、それを苦にして彼から身を引いたんですよ」
「念も気持ちも甘いのお・・・ワシにはアンタの力量が見えるから、
彼女にそんな大層な事が出来るわけがない。偶然が重なっただけの話じゃ・・・」
何年も良心の呵責に苛まれていたのに、偶然の一言で片付けられてしまった。
脱力感から、言いようのない爽快感に気持ちが変わってくる。
青空が清清しく見えたのは何年ぶりだろう。
「そうだったんですか・・・参ったな・・」
「で、事件とは?」
私は顔を引き締めた。調べた事を打ち明けようと思った。
「恋人の遺志を汲んで事件を探ってゆくと、タバコ税から闇タバコへ、
そして他にも何か企んでいる議員を見つけ出しました」
眠っていたかのようにしていた老人の目が光りだした。
「ほー、面白い。で誰じゃ」
「天美がもっとも黒くて、あと早川です」
老人は大きく頷き「ワシらもマークしておる」と言った。
又しても驚かされ、私は穴の空くほど老人を見つめた。
念力で起こしたのだろうか、ごみを巻き上げた風が公園の左から右に通り過ぎた。
私の気持ちが読めたようで老人は笑った。
「あはは、ワシじゃあないよ」
「てっきりそうだと思っていました」
「自然界に手出しは出来んが、ワシらは世直しをしておってな。どうしても我慢ならん奴らを、
会合で決を採ってから懲らしめておるんじゃ。天美も早川も入っておる。そうだ!アンタ暇かい?」
私が呆気にとられながら頷くと老人は立ち上がって腰をゆっくり伸ばした。
category: 言霊
